プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
「あー、俺が食べさせる? ほら、ん」

 柊仁はその皿から適当に料理をつまむと、それを莉都花の口元へと持ってくる。

 こんなことは恋人にすらされたことがない。しかも、人が大勢いる場でこんな目立つことをされれば、動揺するしかない。

「えっ!? いや、ちょっと、いいです。大丈夫です」
「うん、大丈夫だから、食べなよ」
「ちがっ、そういうことじゃなくて!」
「本当においしいから」

 柊仁はそれを証明するためなのか、つまんでいた料理を口にして、「うん、うまい。な?」と言って莉都花に微笑む。

 それから箸をまた新しいものに取りかえて、再び莉都花の口元に料理を持ってくる。

 その細かな気遣いは嬉しいが、食べなければならない空気に持っていくのはやめてほしい。莉都花にとってはいらぬお節介だ。

 莉都花が「本当にいいです」と断り続けても、柊仁は一向に引かない。

 二人でそんなやり取りを続けていれば、注目を浴びるのは当然で、周囲の視線に耐えきれなくなった莉都花がとうとう折れた。

「もう、自分で食べます!」

 柊仁から箸を受け取り、恐る恐る一口料理を口に運んでみたら、莉都花の口から小さく「おいしい」という言葉が漏れた。

「だろ? 他のもおいしいから食べてみなよ」

 この男に乗せられているようで莉都花はまったく面白くない。だんだんと腹が立ってきて、そうすれば勝手にお腹が空いてきて、柊仁が持ってきた料理をパクパクと食べ始めた。

 柊仁は莉都花のその様子を見て、おかしそうに笑っていたが、それを視界に入れれば余計に腹が立つとわかっていたから、料理に夢中な振りをして、柊仁のほうは見なかった。
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