プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
 恋人になって二度目の冬が訪れた頃、二人の運命を分かつ、ある出来事が起こった。

 きっかけは大学の後輩である美遥からの連絡だった。

 これから就活が始まるという美遥は、自分が志望している食品メーカーの就職に関する情報を集めており、同じ学部の先輩である莉都花を頼ってきたのだ。莉都花の就活時に、何か知り得た情報があったら教えてほしいと。

 残念ながら莉都花は園芸業界で働いていて、食品メーカーのことには詳しくなかったが、幸い莉都花のごく身近に食品メーカーに勤めている人間がいたから、莉都花はその人物を紹介した。

 当時はまだ莉都花の恋人だった大輝を紹介したのだ。

 そして、これこそが運命の分かれ道だった。


 二人を引き合わせてから一ヶ月が過ぎた頃、莉都花は大輝に違和感を覚えはじめた。

 それは気のせいだと流せるくらいのほんの些細な変化。

 大輝からデートに誘われる頻度が増えたり、好きだと言ってくれることが多くなったり、普通に考えれば、嬉しい変化かもしれないが、大輝はそれと同時に美遥の話題を避けるようにもなっていて、それが莉都花に真実を勘づかせた。

 大輝は美遥に気があるのだと。そして、それは美遥も同じだった。

 美遥は、大輝の話題に食いつく割には、大輝を不自然に避けるようになっていて、美遥も大輝に恋をしているのだとすぐにわかった。

 大輝も美遥も堂々とその感情を表に出していたわけではないから、きっと世の中の大半の人が彼らを見ても、その気持ちには気づかなかっただろう。でも、莉都花は昔から人の感情に敏感で、心の内を察することに長けていたから、たったこれだけの手掛かりでも、二人の気持ちを知るには十分だった。

 もしかしたら莉都花の過去も、莉都花にそれを気づかせる要因になっていたかもしれない。

 莉都花は過去に二度ほど同じ経験をしているのだ。自分の恋人と自分の親しい誰かが結ばれるという経験を。

 だから、大輝と美遥もそうであるという強い確信が己の中にあった。

 そして、その確信はすぐに事実だと証明された。

 大輝に美遥のことを指摘したら、真面目な彼は正直にその気持ちを認めたのだ。苦しそうに「ごめん」と言いながら。

 それでも大輝は、莉都花と付き合い続けることを選ぼうとしてくれた。莉都花に責任を持ちたいからと。でも、莉都花のほうが無理だった。

 自分の気持ちに正直になってほしいと、莉都花から別れを切り出し、二人はその関係を終えたのだ。
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