プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
 一ヶ月ぶりに訪れるその場所に莉都花は緊張を覚える。前回は快く迎え入れてもらえたが、やはり記憶をなくしたときのことがあるから、どうしても入りづらい。

 それでも今日はモヤモヤを解消すると決めて、ここへやって来たから、莉都花はえいっと勢いよくその店のドアを開いた。

 すぐにカウンター内のバーテンダーの姿が目に入る。ドアに近い位置に若いバーテンダーが一人いて、その奥に哲也が立っていた。

 若いバーテンダーが「いらっしゃいませ」と言った直後に、哲也と目が合う。

「あー、いらっしゃい。どうぞ」

 哲也は前回と同じようににこやかな顔で中へと促してくれる。

 莉都花はそのことにほっと胸を撫でおろし、「ありがとうございます」と言って、カウンター席へと向かった。


 そこへ移動するまでの間に、莉都花はバー全体を見回す。そうして、今日の目的を果たすために必要な人物を探すが、残念ながらその姿は見当たらない。

 莉都花は残念なような、ほっとしたような気持ちになり、軽くため息をついてから椅子に座った。

 すぐに哲也が莉都花の前にやってくる。

「今日はまだ柊仁来てないんだよね。ごめんね」

 哲也に今日の目的を見抜かれ、一瞬言葉に詰まる。

 柊仁と会うためにここへ来たのは確かだが、それを認めるのもなんだか嫌で、莉都花は「いえ、大丈夫です」と曖昧な言葉を返した。

 目的の人物がいなかったとはいえ、中に入った以上はこのまま帰るわけにもいかない。

 とりあえず何か一杯頼んで、それを飲みきるまでは待っていようと決め、莉都花はお任せでカクテルを注文した。
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