プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
「ここ座らせてよ」
「いや、でも……」

 確かにこのテーブルには空きがあるが、わざわざ知り合いでもない莉都花の隣に座る意味がわからない。

 もっと他の盛り上がっているテーブルに行けばいいだろうと、視線で他へ行くよう促してみるが、柊仁は莉都花に微笑みを向けるばかりで、そこから動いてくれる気配はない。むしろ莉都花が承諾するまで動かないという意志すら感じる。

 いろんな意味でこの男の近くにいるのは避けたいが、このままここに突っ立っていられるとかえって目立つ。

 莉都花はあとで自分が移動すればいいかと、渋々席を一つずらした。

「はあ……どうぞ」
「ありがとう、りっかちゃん」
「っ!?」

 莉都花はぎょっとして柊仁を見る。

 この男は今、『りっかちゃん』と言わなかったか。時折そのあだ名で呼ばれることはあるが、初対面の彼が呼ぶのはおかしい。

 莉都花は強い不信感を覚え、柊仁に訝し気な目を向けながら問う。

「……なんで?」
「ん?」
「どうして知ってるんですか? 私の名前」
「あー。さあ、なんでだろうね?」

 柊仁は微笑みを浮かべ、それ以上は答えない。本人が理由を知らないわけないのに、とぼけた返しをする柊仁に、莉都花は若干の苛立ちを覚える。

 莉都花がいくら目で訴えかけても、柊仁は微笑みを返すばかりで答えない。きっと答えるつもりがないのだろう。

 これ以上にらめっこをしていても埒が明かない。理由がわからないのは気持ち悪いが、莉都花は柊仁から訊きだすのは諦めて、早々に視線を外した。
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