狂気のサクラ
そうなんですか、と答えるしかない。
「もう終わってるけど、こうやって顔合わせると、尾をひくよね。だから異動は希望したの」
戸惑いを隠せそうにないけれど、やはり私はこう答える。
「私は何もありませんから」
余計なことを言って彼に嫌われて、会えなくなってしまうのは嫌だ。
「これ、意地悪で言ってるんじゃないの。あの女好きは死なないと治らないから。一応忠告ね。絶対に幸せにはなれないから」
シラを切ったところできっと見透かされてるだろう。それでも私は嘘をついた。
「本当に私はなにもありませんから」
「そう、とにかく私はもう降りる。香川さんも早く降りたほうがいい。惨めになって後悔しか残らないよ」
溝手はそれ以上は何も言わなかった。
降りる?
私と彼は本当の意味ではじまったばかりだ。切れなかったこの縁を運命だとすら感じている。溝手が彼を諦めて去るなら好きにすればいい。私は諦めるわけにはいかない。
惨め?
そんなプライドよりも、彼が欲しい。
それから2週間後、溝手は姿を消した。
彼と関係があったと告白してきた溝手が近くにいたことを何とも思わなかったわけではないけれど、彼とは終わってるのだと悟っていた。彼にも何も聞くことはできなかった。私が彼を問い詰められる立場にいるかも分からない。
それにしても溝手が私と彼の関係に気付いていたなら女の勘というのは恐ろしい。
「もう終わってるけど、こうやって顔合わせると、尾をひくよね。だから異動は希望したの」
戸惑いを隠せそうにないけれど、やはり私はこう答える。
「私は何もありませんから」
余計なことを言って彼に嫌われて、会えなくなってしまうのは嫌だ。
「これ、意地悪で言ってるんじゃないの。あの女好きは死なないと治らないから。一応忠告ね。絶対に幸せにはなれないから」
シラを切ったところできっと見透かされてるだろう。それでも私は嘘をついた。
「本当に私はなにもありませんから」
「そう、とにかく私はもう降りる。香川さんも早く降りたほうがいい。惨めになって後悔しか残らないよ」
溝手はそれ以上は何も言わなかった。
降りる?
私と彼は本当の意味ではじまったばかりだ。切れなかったこの縁を運命だとすら感じている。溝手が彼を諦めて去るなら好きにすればいい。私は諦めるわけにはいかない。
惨め?
そんなプライドよりも、彼が欲しい。
それから2週間後、溝手は姿を消した。
彼と関係があったと告白してきた溝手が近くにいたことを何とも思わなかったわけではないけれど、彼とは終わってるのだと悟っていた。彼にも何も聞くことはできなかった。私が彼を問い詰められる立場にいるかも分からない。
それにしても溝手が私と彼の関係に気付いていたなら女の勘というのは恐ろしい。