狂気のサクラ
「おまえは付き合ってない男とやんの？」
「じゃあ悠樹くんと付き合ってるってあの時言ってよかったの？悠樹くんも彼女いないってみんなに言ってるし」
「それは言う必要ないだろ。それに俺はしっかりしてるけどおまえは隙があるから」
「え？」
彼しか見えていない私がこんな言葉を浴びせられるなんて。
「今井みたいな女は隙もないし手出しづらいからな。おまえは簡単にいけそうな隙だらけなんだよ」
彼は私をそんな風に思っていたのだ。出会ってすぐにすべてを許したことでそう思われても仕方がないのかもしれない。でもそれは彼だったからだ。私は腹が立って言い返した。
「悠樹くんは私と付き合ってるとか思われたら困るんでしょ？可愛い子紹介してってバイトの人に言ってるのも知ってるから」
「そんなのその場のノリだろ」
他にも女の子と連絡を取っているのも事実だ。
「溝手さんとも付き合ってたんでしょ？」
「はぁ？付き合ってないし。何回か飯とか行ったけど奢ってくれるって言うから行っただけだし。だいたいいつの話だよ」
彼は面倒くさそうに言った。溝手の言っていたこととはまるで違うけれど、これ以上彼を問い詰めて嫌われたくはない。
「分かった。今度からは彼氏いるって言うから」
無駄な争いはしたくない。私がそう言えば、彼は私を抱きしめてくれる。
その日も彼に抱かれて帰宅した。寝不足で仕事へ行くのもいつものことだ。それは嬉しい眠気でもあった。
彼がカラスが白いと言えばきっと白く見えてしまうほど、私はこの恋に痺れてしまっていた。
< 54 / 101 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop