狂気のサクラ
春の雨に打たれ、開花から10日も経たないうちに『有楽』の桜は葉桜になり、緑が目立つようになった。桜がこんなに早く散ってしまうなんて知らなかった。
天気のいい日でも黄砂のせいか澄み切った青空とは言えないくすんだ空が広がる。黄砂が飛んでくることも、子供の頃は知らなかった。
私は会社の近くに部屋を借り、一人暮らしをはじめることになった。
日曜日の午後、さゆりと北川、そして近藤も手伝いに来てくれた。引っ越しと言っても荷物は少ない。北川と近藤、私の車で運べる程度の荷物だ。
「本当に全部なくなっちゃって」
ガランとした私の部屋を見て母は少し涙ぐんだ。
私は息苦しいこの家から早く出て行きたかったし、何より彼といつでも会える環境でいたかった。1人で暮らすことに彼も賛成してくれた。
母は最後まで反対していたが、私はこれからの暮らしが楽しみで仕方がなかった。これからは自由だ。
三台連なってマンションまで走り5つ程の段ボールとパイプベットを運んで終了したが引っ越し業者を頼めばそれなりの値段だっただろう。
夜になって彼が来た。
「いい部屋じゃん」
キッチンや浴室を眺めながら彼が言った。
「ドアがあるのがいいな。俺の部屋ないからな」
まだ何もない部屋だけど彼がいてくれるだけで満足だった。
「引っ越し屋頼んだの?」
「ううん。友達が運んでくれた」
「女?」
「うん。あとその子の彼氏とその友達」
そう言うと彼は急に怒鳴り出した。
天気のいい日でも黄砂のせいか澄み切った青空とは言えないくすんだ空が広がる。黄砂が飛んでくることも、子供の頃は知らなかった。
私は会社の近くに部屋を借り、一人暮らしをはじめることになった。
日曜日の午後、さゆりと北川、そして近藤も手伝いに来てくれた。引っ越しと言っても荷物は少ない。北川と近藤、私の車で運べる程度の荷物だ。
「本当に全部なくなっちゃって」
ガランとした私の部屋を見て母は少し涙ぐんだ。
私は息苦しいこの家から早く出て行きたかったし、何より彼といつでも会える環境でいたかった。1人で暮らすことに彼も賛成してくれた。
母は最後まで反対していたが、私はこれからの暮らしが楽しみで仕方がなかった。これからは自由だ。
三台連なってマンションまで走り5つ程の段ボールとパイプベットを運んで終了したが引っ越し業者を頼めばそれなりの値段だっただろう。
夜になって彼が来た。
「いい部屋じゃん」
キッチンや浴室を眺めながら彼が言った。
「ドアがあるのがいいな。俺の部屋ないからな」
まだ何もない部屋だけど彼がいてくれるだけで満足だった。
「引っ越し屋頼んだの?」
「ううん。友達が運んでくれた」
「女?」
「うん。あとその子の彼氏とその友達」
そう言うと彼は急に怒鳴り出した。