ご先祖様の力を借りて。
私は愛摛にパスワードを解除したスマホを渡す。

愛摛は慣れた様子でスマホをいじり、簡単に連絡先を登録した。

返されたスマホを見ていると、愛摛がスマホの画面を指しながら話し出した。


「ここを押して、こうすると……」

「あ、開いた」

「後はこうして、メールを送れるよ」

「なるほど……ありがとう、愛摛」


私は愛摛にお礼を言う。

メールは初めて使ったから、使い方がわからなかった。

愛摛は「大したことはしてないよ」と謙遜しているが、十分すごいと思う。

そんな愛摛はスマホの画面を見て、焦ったような表情をして言う。


「ごめん、もう帰るね」

「いいよ、気をつけてね」

「うん、またね」

「また」


走っていく愛摛を見送って、校門から離れる。

そういえば話している最中、妖が襲ってこなかった。

天見様の術で見た未来では、結構な数の妖がいたのに……

不思議に思いながら、別の場所に向かう。
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