ご先祖様の力を借りて。
うなずくと、直斗さんは安心したような表情をして医務室を出て行った。

私はもう一度、海晴の寝顔を眺める。

……昨日、気づいたことがある。

どうしてあんなに焦っていたのか、海晴を守りたかったのか。

これが、好き……っていう感情なんだと思う。

愛摛がメールで言っていた。

友達に好きな人ができたみたいで、いろいろ相談されるって。

そのことをいろいろ聞いてみたけど、今の私の状況に似ている……気がする。

私だけをみていて欲しいし、好きな人のためならなんでもできる。

まるで私みたいだ。

いつ好きになったのかはわからない。

だって愛摛に聞くまでこの感情がどういうものか、気が付いてすらいなかったから。

私は不思議な気持ちのまま、そっと海晴の頭を撫でてみる。

ふわふわとした髪の毛が、気持ちいい。

しかし、海晴の瞼が動いたのをみて、手を引っ込める。

そのままじっとみていると、海晴の目が開いた。


「……美霊か。あの後どうなった?」

「妖は倒した。欠片も今持っている」

「そうか……」


欠片をポケットから取り出して見せると、海晴はほっとしたように息をつく。

そのまま起き上がると、私から欠片を受け取った。

海晴は欠片の大きさに驚きながら、観察する。

……あ、そうだ。
< 130 / 149 >

この作品をシェア

pagetop