ご先祖様の力を借りて。
「部屋には戻らないで、って直斗さんが言ってた」

「……そうか」


私が話しかけると、海晴は少し考えて、少し不満そうに頷いた。

そのまま、少し気まずい沈黙が流れる。

沈黙を破ったのは、海晴だった。


「……昨日は役に立てず、すまなかった」

「別にいい、気にしてない。それより、怪我は平気なの?」

「ああ、平気だ。疲れもすぐに消える」


そう言って、頭の怪我があったところを見せてくる。

確かに怪我はないけど……

でもまだ少し、疲れたような顔をしている。

私が心配そうにみていると、海晴が言った。


「……もうなんともない、気にするな」

「わかった……」


そう言われても、少し気になる。

できるだけ気にしないように、海晴から目を逸らす。

……あ、そういえば。

愛摛が友達にしたアドバイスの中に、早く告白すればいいというのがあった。

他の人に取られないように、告白すればいいのに、と言っていた。

……告白、した方がいいのかな。

いや、たぶんしたほうがいいと思う。

少し、恥ずかしいけど……

私は覚悟を決めて、海晴に話しかけた。
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