今日は我慢しない。
 私の強い視線に押し負けたのか、佐柳はそのまましばらく考え込んだ。

 そして気まずそうに話し出す。


「俺、三条のこと全然わかってなかったなって……」

「私のこと?」

「ご両親がいなくて一人暮らししてるとか、性別のせいで大変な思いをしてきたんだろうなと思ってはいたけど……あんま触れちゃいけないだろうって、深く聞かないで分かったつもりになってた。お母さんがどうやって死んじゃったかとか知らずに、番になりたいとか……」


 佐柳は大きくため息を吐き出しながらしゃがみこんだ。


「すげぇ反省してる。軽率で自己中な自分が、恥ずかしい」


 ザァ、と風が吹いて、佐柳の少し伸びた髪を揺らした。


 無防備なつむじが可愛くて。

 私のために落ち込んでくれる佐柳が愛おしくて。


 しゃがんだままうつむく佐柳の前に膝をついて、首に腕を回して抱き着いた。



「大好き」



 心からの言葉が、何のしがらみもなく口からこぼれた。


「え……」


 佐柳の戸惑いが聞こえる。


「それは……嬉しいけど、なんで今?俺いまダサすぎてめちゃ恥ずかし……」

「大好き」

「お、おう……?」


 佐柳さ納得行かないようなそぶりをしつつ、私を受け止めてくれる。

 優しい手も、匂いも、その存在自体が尊くて、愛おしい。


「ねぇ、佐柳」

「ん」

「番いになろ」

「……ん?」

「私、佐柳と番いたい」


 気でも触れたかと、佐柳はあわてて体を離して私の顔を覗き込む。


「え?ちょっと……ちょっと待って、どうしたの、急に」


 最初に番を拒否してたはずの私から、突然の提案。

 佐柳はまだ事態をうまく呑み込めてないみたいだ。

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