今日は我慢しない。

「……私、お母さんみたいになるのが怖かったの」



 ――お母さんね、なにも後悔してないのよ



「でも、お母さんはちゃんとお父さんと愛し合ってて、幸せだったんだなってわかって、すっごく嬉しくて」

「……うん」


 話し出すと気持ちが高ぶって、声を上ずらせながら泣きそうになる。

 そんな私を、佐柳は優しく包み込むように見つめる。


「人生でも一、二位を争うぐらい嬉しいことが起きたとき、佐柳が隣にいてくれたことが、ほんとに最高に幸せで」


 そう、幸せ。

 今、佐柳がいてくれて、すごく幸せ。

 そう思ったら涙がブワッとあふれ出した。


「佐柳……っ」


 私は佐柳の手を取って、指を絡ませた。


「私、佐柳といると幸せなの。すっごく幸せ。ずっとそばにいたい」

「……うん」


 この先何があっても、きっとこの選択を後悔したりしない。

 佐柳となら、どんなことも乗り越えていける。


「番になりたい。佐柳と」


 ザァ、とさっきよりひと際大きな風が私たちの間を抜けていく。


「……ほんとにいいの?」

「うん」


 私は佐柳の頬に手を添えて、そっと唇に口付けをした。


「絶対佐柳がいい」


 震える声で言ってみせると、佐柳も私の頬に手を添える。

 愛おしそうに細められた佐柳の瞳に、街頭の明かりがぼんやりと映りこんだ。


「……俺も……絶対三条がいい」


 どちらからともなく顔を近づけてゆっくりと口付けを交わした。

 怖くなるぐらい幸せで、胸がいっぱいになって


 感情の行き場がわからなくて、また涙があふれ出した。



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