人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
「あの、なにか?」

「いえ、聞いていた通りのかわいらしい方だなと思ったの。これからよろしくね、芽郁さん」

 聞いていたということは、成田さんが伝えたのだろう。

 それにしても、かわいらしいだなんて。年上の女性に言われるのは抵抗があるときもあるが、春海さんの話し方は朗らかで、全く嫌な感じはしなかった。むしろ、なんだか気恥ずかしい。

「芽郁さんは、これからお仕事かしら?」

 私の格好を見ながら、春海さんは言った。
 ビジネスカジュアルにコート、バッグは大きめだが、きれいめのものを使っている。見た目も中身も、OLだ。

「はい」

 答えると、春海さんは「そう……」と語尾を濁らせた。

「あの、なにか?」

「実は……自衛隊の官舎って、管理会社とかないじゃない? 家賃がない分仕方ないのだけど、共用部とかゴミ出し場の掃除を、誰かがしなきゃいけないの。でもね、お仕事されてる配偶者の方が増えて、人出が足りてないのよ」

「なるほど」

「なんて、芽郁さんに言ったら『あなたにやりなさい』って言ってるみたいじゃない! やだ、もう。お仕事よね、遅れちゃったら大変。行ってらっしゃい!」

 春海さんは言いながら、文字通り私の背中を押す。私は申し訳なくなりながら、「行ってきます」と官舎を後にした。
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