彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
 * * *

 実家に戻ると待っていたのは佑と祖父母だった。

 先生は祖父母に挨拶が遅れたことを詫びてくれた。ふたりには私から今までのことを説明した。実は婚約者のふりをしていたこと、先生の出張までを一区切りと考えていたこと、先生がプロポーズしてくれて私も結婚したいと思っていることを話した。

 ふたりは先生に恩があるのもあって、表立って反対だとは言わなかった。だが、畑の借金の肩代わりの話になったとき、苦い顔をした。

 「先生、お久しぶりです。俺のこと覚えてます?」

 佑が先生に挑むように言った。

「もちろんだよ。言われたことも、美味しいぶどうのことも全部覚えている」

「じゃあ、先生のやったことは弁護士としては卑怯だと言っても怒りませんよね?俺は前から佳穂と一緒になりたいと伝えていた。それを佳穂の父親のことを利用して無理に婚約したんでしょう。そんな風に迫った結婚なんて無効だ。弁護士の風上にもおけませんよ」

「そうかな?彼女の意思はどうなんだ?」

「……それは……」

「やめて、どうして喧嘩腰なんですか?」

「佳穂、実はな……畑のことだが、すでに佑君に売ることで手続きをしてしまったんじゃ。まさか弁護士先生と結婚するつもりだなんて……」

「え?どうして勝手に!」

「勝手なのはそっちもそうだろ。佳穂は先生との同居をお父さんの問題が解決したら解消すると言っていたのに、いつになっても戻ってこない。しかも、連絡すると先生の事情があるとかわけがわからないことを言ってごまかした」

「それは、だって心配をかけたくなくて……ごめんなさい」

 佑が言う。

「問題が解決したとしても、仕事が大事な佳穂は先生に嫌だとは言えないから戻ってこられない。でも俺が畑を買って佳穂と結婚できれば佳穂はここに戻ってくる。佳穂のお爺ちゃんは佳穂の相手は先生より俺の方がいいんだよ。当たり前だ、俺のことを爺ちゃんはよく知っている」

「……!」

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