彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「は、はは……そうか、そういうことか……要は君に愛がないんだろう?」

「そんなことは……」

 先生は悲しげに髪を掻き上げ、空を見ると、絞るように言葉を出した。

「いい。僕は君の愛を求めているわけじゃない。ただ、僕が君を側で守りたいんだ……この先もずっと……僕だけが……」
 
「先生!」

「でも……君にとって僕は特別でなく、上司兼庇護者でしかないならこの結婚を強いることはできないな……」

「ちっ……ちが……」

 違います、私は先生が好きですと言いたかった。先生は私をそういう意味で好きではないんですか?と詰め寄りたかった。でも怖くて聞く勇気が出なかった。私の気持ちを先に告げるのも違うと思った。先生にあるのが庇護欲だけなら、そういう気持ちがなければ悲しすぎる。

「君に僕への愛がなくても、僕は君を守ってやる。別に……愛なんてない方が結婚にはいいのかもしれないし……」

「は?先生何言ってるんですか?」

「僕は長い間、仕事で色々な離婚を見てきた。愛はあっても、実は相性が悪いだの、食が合わないだの、金の使い方が合わないとか……君に愛がなくても僕は君がいい。何しろ、君は僕の偏食を知っている。仕事のこともインターンの時から見ていてすでに熟知している。それに、君を妻にすれば僕の弁護士秘書を探す必要は二度となくなる。僕らの結婚は条件としてはいいことずくめだろう」

「条件だけで結婚するんですか?お見合いみたいですね」

「まあ、君が言うように愛があるに越したことはないだろう。しかし、愛がなくなったと離婚協議に来る依頼人が多い。どう考えても、愛ほど不可思議なものはないと思わないか?愛とは半永久的なものだと思っていた私はこの仕事をしてそれが間違いだと知ったよ」

「もし、父のことがきちんと片付いて、私が先生に守ってもらう必要がなくなれば、結婚する必要はありません」
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