募る想いは果てしなく
「かなえちゃんくらいの年齢だったら、早坂マネージャーみたいな大人な男性は、やっぱり魅力的に見えるんじゃない?」
「まあ……早坂さん格好いいし、頼りになるけど」
「お? 結構気になってる感じだね?」
「ええっ!?」

 あからさまな狼狽っぷりだ。
 場がにわかに色めき立つ。
 アワアワと焦り始めるかなえちゃんを庇ってあげる優しいスタッフは、残念ながらこの場に1人もいないのだ。私も含めて。

「え、ちょっとかなえちゃん?」
「そうだったの?」

 お陰で皆の関心事は、私から彼女へと移る。

「違いますよ! わ、わたしは、ダメンズが好きなんです! 早坂さんみたいな完璧な人は、理想とは真逆のタイプっていうか……!」
「とか言って本当は?」
「もうっ、七瀬さん! からかわないでください!」

 皆の笑い声が室内に響き渡る。
 ひやかしの対象になってしまった後輩の慌てふためく姿は、見ていて楽しいし可愛いものだけど。

 開店時間が刻々と迫っている。
 そろそろ仕事モードに頭を切り替えないと。
 依然として賑わう彼女達の輪からそっと離れ、私は事務所へと足を向けた。
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