募る想いは果てしなく
「控えるように言っとく?」
「いいよ別に。営業中だけ声抑えてくれれば」
「……わかった。本部からメールきてる?」

 早坂の横からPCを覗き込む。
 画面にはメールフォルダが表示されていた。
 本部と菅原マネからのメールが数件。
 最初に目についた件名を読み上げる。

「商品回収の件について?」
「新商品で入荷したコンパクトミラーがあっただろ。あれの回収指示」
「なんで回収になったの?」
「パッケージの文字が商品に付着してたらしい」
「ああ、なるほど。アウトだね」

 顧客の中には神経質な人も多い。
 そして今はSNS時代だ。
 ネット媒体で誰もが情報交換をする。
 商品の些細な汚れや色褪せはクレームに繋がりやすく、口コミやSNSで拡散されやすい。

 悪い噂が立った店はすぐに潰される。
 ネットの声は驚異的で、影響力は絶大だ。

「もう売場から全部回収しておいたから」
「さすが早坂、仕事早い。ありがとう」
「他にも指示きてるから、俺やっとくわ」
「うん。発注PCとiPadのマスター更新は私がやっておく……ん?」

 そこで気付いた。
 ポケットの中のスマホが震えていることに。
 社用スマホじゃない、私の方。
 手に取ってタップすれば、1件のショートメールを受信している。

 ……嫌な予感がした。
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