募る想いは果てしなく
 画面を睨みつけること数秒。
 放置するわけにもいかず、恐る恐るスワイプする。

【遥、ちゃんと会って話し合おう。
今日、仕事終わったら部屋に行くから】

「……またか」

 一気に気分が沈む。
 それは青木さんからの一方的なメッセージ。
 電話番号も変更するべきだったと後悔する。

 彼のLINEは既にブロックしてる。
 相手の連絡先も消去した。
 でも青木さんは私の連絡先も、住んでいるマンションも勤務先も把握してる。
 彼との繋がりを、完全に断ち切れていないんだ。

 着信拒否すれば絶対に会いに来る。
 完全に連絡断ちするのは気が引けた。
 話し合うなら、電話の方がまだ精神的負担は軽い。
 あの人の顔を見ずに済むから。

 スマホ越しに何度も思いは伝えたのに。
 青木さんの家庭を壊す覚悟がない、奥さんと子供を大事にしてほしい、もう関わりたくない、ただ別れて欲しいと。

 本当は電話だってしたくなかった。
 声だって聞きたくない。
 でも必要なことだから耐えたのに。
 それを相手が理解してくれない。
 ここまで懲りないとなると、もう電話での話し合いは無理かもしれない。

 直接会うしかないのかな。
 面倒だな……そう思っていた時。
 七瀬、と低い声が耳に届いた。

 ハッとして我に返る。
 椅子に腰かけたまま、早坂の瞳が私を見据える。

「ごめん、何の話してたっけ? あ、思い出した。マスター更新は私がやっておくね!」
「……」
「早坂、聞いてる?」
「……あの男から連絡きたのか?」

 ……こういうとこ鋭いんだよなあ。
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