募る想いは果てしなく
「うん、きちゃった」
「なんて?」
「ちゃんと会って話し合おう、ってさ。モテる女は辛いわ」
「……大丈夫か?」
「全然大丈夫よ。余裕余裕。ぶいっ」

 笑顔でVサインなんてかましてみる。
 本当は余裕なんてない。
 でも強がっていないと平常心を保てない。
 無理に虚勢を張ることで、胸に巣食う不安を必死で追い払おうとする。

 私も今年で26歳になる。
 交際が続けば将来の事だって考える。
 好きな男の子供が欲しいと願うのは女の本能だ。

 なのに。
 結婚を考えていた相手は別の女と結婚してた。
 夢見ていた子供も別の女と育んでいた。
 それを本人から知らされた時の衝撃といったらない。
 自分だけが何も知らずにいた、そんな羞恥と絶望と、相手に対する憤りが心を支配しようとする。

 人間不信に陥りそうだ。
 信じていた人に裏切られて、誰の事も信用できなくなりそうで怖い。
 でも、そこまで堕ちたくなかった。

 真実を知った時はすごく傷ついたけど。
 仕事から帰ってきては毎日泣いてたけど。
 でも時間が経てば、心の傷は癒えてくる。
 前向きな考えもできるようになってきた。

 これから何十年と続く長い人生。
 青木さんと一緒の時間を過ごしたのは、そのうちの、たった4年だけ。
 この僅か4年ぼっちに、これからの人生まで振り回される必要なんてない。
 そう思えるようになった。
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