募る想いは果てしなく
 彼に別れを告げてから、もう半年が経つ。

 私だっていい加減、前に進みたい。
 新しい人と出会いたい。
 新しい恋に踏み出したい。
 今度こそ、結婚を視野に入れた交際をしてみたい。

 その為には彼との関係を断ち切らなきゃいけなくて、なのにあの人は、いまだに私と別れるのが嫌だと言う。
 まだ繋がっていたいとか。
 離れたくないとか。
 馬鹿げたことをぬかすんだ。

 どの口が言うんだと腹が立つけど、仕事場に私情を持ち込むわけにはいかない。部下への示しがつかなくなる。
 だから笑ってこの場をやり過ごそうとしたのに。
 早坂はそれを良しとはしなかった。

「今まで青木とどのくらい話し合いした?」
「あー……10回くらい?」
「10回も? 電話で?」
「う、うん」

 しどろもどろに答えれば、早坂の顔が険しいものに変わる。

「……あのさ、余計なお世話かもしれないけど。話し合う努力もしてるのに、半年掛かっても別れられない状況なら、もう2人で解決するとか無理じゃないか? 直接会って話し合うにも、立会人がいた方がよくないか?」

 う、と息が詰まる。
 早坂の言ってることは最もだ。
 私は別れたくて、でも相手は別れたくなくて、互いに主張を曲げられないまま話は拮抗している。
 どちらかが折れない限り、会話は平行線のままだ。

 冷静に話し合える場を設けてくれて、客観的な意見をくれる、第三者の理解者。
 そんな人が周りにいるだろうか。
 そもそも誰にも話していないのに。

「俺が立ち会うか?」
「いやいやダメ、それは絶対ダメ」

 確かに早坂がいてくれたら心強いけど。
 不倫相手との話し合いの場に男を連れてくるのは、さすがにマズイ気がする。
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