募る想いは果てしなく
 事務所での一件の後。
 彼女にはあらかた、事情を説明しておいた。
 とはいえ、かなりザックリと。
 他人の不倫の内情なんて、本当は知らなくてもいい事だ。

 かなえちゃんは19歳。
 まだ成人を迎えたばかり。
 これから社会に出て様々な学びを得るだろう。
 そんな子に、泥沼化した大人の事情を話すなんて気が引ける。

「相手、部屋に来るんだよな?」
「うん、そう。仕事終わったら連絡してって伝えてる。多分19時頃じゃないかな」

 今の時刻は18時。
 そろそろ彼から連絡が来るかもしれない。
 ちらりとスマホをチェックしてみる。
 まだ通知は来ていない。

「鈴原を家に送ったら俺も帰るけど。何かあったらすぐ連絡しろよ」
「うん」
「あと青木が来たら、喫茶店に行け」
「なんで?」
「2人きりは危ないだろ」
「2人きりは危ないです!」

 2人の発言が見事にハモる。
 そこまで警戒することなんだろうか。

「絶対に2人きりで話し合おうとするなよ。もし相手が拒んだら、さっさと部屋から追い出せ。あと、一応俺にも連絡して。心配だから」
「う、うん。わかった」

 さすがに心配性が過ぎる。
 と思ったけど、早坂は私の身を案じて言ってくれてるわけだから口に出さないでおいた。

 ふうっと大きく息を吐く。
 よし、と気合を入れて、私は助手席から降りた。
 ドアを閉め、車内の2人に向き直る。
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