募る想いは果てしなく

失望

4




「締め忘れたっけ……?」

 今朝のことを思い出す。
 早朝に目が覚めたら、早坂が帰る支度をしていて。
 寝惚け眼をこすりながら彼の背中を見送った。
 その際に鍵を締めたのは覚えてる。

 早坂が帰った後は朝風呂に入って。
 朝食を作って、メイクをして。
 一連の行動をひとつひとつ思い起こしてみる。

 そして部屋を出る時に施錠した。
 ちゃんと確認もした。
 やっぱり締め忘れてなんかいない。
 なのにドアは開いている。

「……」

 どうしようと迷ったのは一瞬のこと。
 ドアノブを掴み、慎重に捻ってみる。
 恐る恐る開ければ、ギィー……と不快な軋み音。
 それが余計に恐怖心を駆り立てる。

 数センチ開け放たれたドアの向こう。
 隙間から中を覗いても、深い闇夜に包まれた空間が広がっているだけだ。
 室内はシンと静まり返っている。
 当然だ、1人暮らしなんだから。
 この部屋に私以外の誰かがいるはずがない。

 このマンションは築何十年と経つ古い建物だ。
 オートロックも付いていない。
 監視カメラすら設置されていない。
 防犯性の低い物件。

 それに合鍵も作ってない。
 賃貸マンションの決まり事で、鍵の複製は禁止されているから。
 たから私以外、誰も入室できないはず。

 なら、この状況は何だ。
 施錠したはずの鍵が開いている事態に背筋が冷える。
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