募る想いは果てしなく
「……だ、誰かいますか?」

 アホな問い掛けだとわかってる。
 わざと声を発しないと、恐怖で胸が押し潰されそうで。
 肝試し中に歌って恐怖を振り切ろうとする人の、あの心理状態と同じ状況に陥っている。
 部屋が荒らされていたらどうしよう。
 誰かが潜んでいたらどうしよう。
 考えるだけで不安と恐怖が全身に纏わりつく。

 弱々しい私の呼び掛けに応じる声はない。

 でも、感じた。
 微かに動く人の気配。
 間違いなく、この部屋の中に誰かがいる。

 それがわかった今、私がするべき事は決まった。

 すぐにこの場から逃げよう。
 そして大家さんに連絡しないと。
 もしかしたら空き巣犯かもしれない。

 あらゆる可能性を考えて、そっとこの場から立ち去ろうとした時。
 駐車場の街灯の光が玄関を照らした。

 煌々と射す光の先。
 そこにあったのは私以外の靴。
 サイズ的に男性のものだ。
 それが見覚えのある靴だと気づいた瞬間、強張っていた体から力が抜けた。

 ここで安堵を覚えるのは間違いかもしれないけれど、部屋に潜んでいた人物が私の知らない誰かよりはマシだ。

 ……にしても。
 この人、どうやって私の部屋に入ったんだろう。

「……何してるんですか、青木さん」
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