募る想いは果てしなく
「青木さん、もう一度言います。私と別れてください。貴方には、一生を添い遂げると誓った相手がいるんです。それは私じゃない。奥さんとお子さんのこと、ちゃんと考えてあげて。こんなところで他の女にうつつを抜かしてる場合じゃないでしょ?」

 これが本当に最後。
 そう言わんばかりに説得を試みる。
 それでも彼は動じない。
 穏やかな眼差しで私を見つめているだけ。
 別れ話をしている男女の雰囲気とはほぼ遠い。

 ここまで表情が変わらないと逆に怖い。
 彼の瞳に浮かぶ感情が何なのか、私には読み取ることもできなかった。

「そんなに俺と離れたいの」
「今後一切会いたくないです」
「……そう」

 目を閉じて、彼は深く息を吐く。
 顔には諦めの表情が染みついていて。
 やっと納得してくれた、そう安堵した私の身体は、次の瞬間、青木さんに抱きすくめられていた。

 驚きで目を見張る。
 瞬きをすることも忘れて、私を腕の中に閉じ込める彼を呆然と見上げた。

「……ちょ、なにっ、離して!」
「ああ、遥の匂いだ」

 陶酔したような声が落ちる。
 私の髪に指を絡め、顔を埋めてくる彼の仕草にゾッとした。
 身の毛がよだつほどの嫌悪感が身体中を支配する。

「っ、いい加減にして!」

 必死にもがけば、その勢いに押されて彼の体が離れた。

 どうしてわかってくれないの。
 どうして、こんなに。
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