募る想いは果てしなく
 私達が過ごした4年間って、この人にとって一体何だったんだろう。
 青木さんから連絡が来る度に嬉しくなって、舞い上がっていたのは私だけだったなんて、なんともお粗末すぎる話だ。

 恋人だと思っていたのは私だけ。
 彼にとって、私は恋人ごっこの相手。
 ちょっと恋人扱いすればしっぽを振って喜んでくれる、まるで彼のペット扱いだった私。

 最悪だ。惨めすぎる、こんなの。

 本当に大好きだったのに。
 彼との将来を夢見ていた、過去の自分を呪った。
 同時に憎しみも湧く。

「――2度と来んなクズ」

 怒りに任せて口走ってしまった直後、



 ――パンッ!

 その瞬間、顔に響いた破裂音。
 物理的な衝撃を受けて、体が真横に吹き飛んだ。

 テーブルの脚に躓いて倒れ込む。
 ガツッ、とこめかみに嫌な衝撃が伝わった。
 テーブルの角に頭をぶつけたと悟った瞬間、身に起こった事態を把握する。

 ……ぶたれた。
 わたし今、頬をぶたれた。
 青木さんに殴られた。

「……あーあ」

 頭上から落胆の声が落ちる。
 すごみさえ感じる低音。
 ゆるりと顔を上げた私の瞳に映ったのは、こんな時でも穏やかに微笑んで私を見下ろす、青木さんの姿。

「せっかく大事にしてたんだけどなあ」

 けれどその声は。
 背筋が冷える程に温度がなかった。
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