募る想いは果てしなく
 叩かれた頬が熱を帯びる。
 時間差でこめかみにも痛みが襲ってきた。

「……ごめんね遥。遥が言うこと聞いてくれないから殴っちゃった」

 目を細めて彼は微笑む。
 悪びれてる様子はない。
 信じられない気持ちで私は呆然と彼を見つめた。
 頭を殴られたようなショックが全身を貫く。

 今まで人を殴ったこともなければ殴られた経験なんてない。
 ましてや相手は男で、かつて私が好きだった人。
 頭が痺れて目の前の現実が受け入れられない。
 驚きと恐怖で声すら出なかった。

 こめかみが痛い。
 どこもかしこも鈍痛が響く。
 手足も思うように動かせない。
 立ち上がることもできずに崩れ落ちている私の視界に、気怠そうに腕を伸ばしてくる青木さんの姿が映った。

 また殴られる――

 思わず身を固くする。
 痛みを伴う衝撃は、けれどいつまで経っても訪れなかった。
 でも、状況はより悪くなった。
 青木さんが私に馬乗りになったからだ。

「……っ!?」

 慌てて身を起こそうとしたけど遅かった。彼は私の首元に指を巻き付け、ゆっくりと力を込めてくる。
 喉仏をぐっと押され、ひ、と喉がひきつった。
 吐き気を催す程の気持ち悪さに襲われる。

 必死に体を捩っても、退けてくれる気配はない。
 両手で胸を突っ張ってみても微動だにしなかった。
 所詮女の力が男に敵うわけがない。
 彼に首を絞められている状況は一向に変わらなかった。
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