募る想いは果てしなく
「もっと格好いいこと言って引き止めてくださいよ……。これが漫画なら、『そんな男やめろよ。俺がなんとかしてやる』って決めるところですよ」
「幻想と現実をごちゃ混ぜにすんなよ」
「だって彼氏がクズすぎる……七瀬さんは騙されてたんですよ。早坂さんが奪っても、誰も文句なんて言いませんよ」

 それが出来るならとうにやってる。
 そう言いたい気持ちを抑え込む。
 年齢的にも精神的もまだ若かったなら、あるいは自分の本能のままに行動していたかもしれない。

 奪いたいが故に、あの手この手で画策して。
 七瀬の隣のポジションを確保しつつ、弱っている彼女を励まして、弱味につけこんで。
 そんな風に、やり方が汚くても努力していたかもしれない。

 けれど26歳を迎えた今。
 物事を俯瞰的に捉えることが出来るようになった。
 後先のことを考えて行動するようになった。
 感情より、理性を優先してしまう。

 それらは決して悪いことではないが、臆病になったと言われれば否定はできない。

 なんにせよ、俺が介入すれば泥沼になる予感、そうなれば七瀬の身が危うくなる可能性があるならば、もう少し様子を見た方がいいと判断してしまうのも致し方なかった。

「彼氏、今から来るんですよね」
「多分な。うまく話し合いが進めばいいけど」
「早坂さん、七瀬さんが彼氏と別れたらどうするんですか?」
「……どうするって?」
「告白! しますよね?」
「……まあ、するよ」
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