募る想いは果てしなく
 俺の返答に、鈴原は黄色い声を上げた。
 ぱっと表情が輝いて、素直に喜ぶ姿が微笑ましい。
 七瀬達がこの子を可愛がる理由がよくわかる。

 鈴原自身も七瀬のことをよく慕っている。
 七瀬が自分の理想だと、事あるごとに、そう口にしている事も知ってる。

「鈴原は本当に七瀬が好きだな」
「憧れの人ですから。それに早坂さんも」
「……俺?」

 それは初耳なんだが。

「私、3つ上の兄がいるんです」
「お兄さん?」
「はい。その兄がよく言ってました。恋愛でも仕事でも、互いに切磋琢磨できるパートナーが出来たら幸福ものだって。そんな相手はそうそう出来るものじゃないって」
「……」
「だから七瀬さんは私の憧れだし、七瀬さんと早坂さんは理想の姿」
「……それは有難いな」
「後輩にここまで言わせたんですから、私の理想、ちゃんと叶えてくださいね?」
「ああ、努力はする」

 後輩から恋愛の応援をされるのも、なかなか気恥ずかしいものがあるが。
 すっかりにやけている鈴原をミラー越しに見届けて、エンジンをかけた。

「そろそろ帰るか。鈴原、家どこだっけ?」
「……え!?」
「え、じゃない。ずっと此処にいるわけにもいかないだろ」
「いや、そうじゃなくて!」

 焦ったような彼女の声に眉を寄せる。
 もう一度ミラーに視線を戻せば、車窓にべったり額をくっつけている鈴原の姿がある。
 その視線の先は、七瀬の住むマンションだ。
< 51 / 77 >

この作品をシェア

pagetop