募る想いは果てしなく
 好きな人と結婚して。
 落ち着くべきところに落ち着きたい。
 そんな思いが生まれ始めている。
 家庭を持つ友人が増えて、周りの変化に影響されたのかもしれない。

 自分を支えてくれる奥さんがいて、共に育てて成長を見守っていく子供がいて。
 毎日共に飯食って、休日は家族で出掛けたりして。
 平凡な暮らしでもいい、そんな家族団らんな光景に憧れを抱くようになった。そういう幸せのカタチもありなのかと。
 ……その相手が、七瀬だったらよかったのに。

 3年が経って諦めようとした想いは、結局熱が冷めることなく4年が過ぎた。
 長年の片想いというのは精神的な疲弊を伴う。
 26にはなかなかキツすぎる現実だ。

 やっぱり歳か、なんて考えていた時。
 スマホの着信が鳴った。

「……え、七瀬?」

 意外と早く連絡がきたことに驚く。
 車載ホルダーからスマホを外し、通話ボタンを押した。

「……あれ、切れた」

 耳に押し当てても、通話の切れた虚しい機械音だけが響いている。
 かけ直そうとして、ふと思い止まった。
 鈴原が部屋に到着したのだろうか。
 だから一度通話を切ったのかもしれない。

 だとしたら、また七瀬から着信が入るだろう。
 何かあれば鈴原からも連絡が来るだろうし。
 もう少し待つか。
 そう判断してスマホを助手席に置き、瞳を閉じた。







「……坂さん! 早坂さんってばッ! 起きてッ!」

 突然の怒声にビクッと体が跳ねた。
 謎の打撃音がすぐ傍で聞こえる。
 驚いて目を見開けば、車窓をバンバン叩いている鈴原の姿があった。
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