募る想いは果てしなく

触れる唇

6




「――はい、これ。さっき撮ったレントゲン。ここ、あばら骨ね。ヒビ入ってるのわかる?」
「……」
「全治2ヶ月だね」

 淡々と告げられた言葉に呆けてしまう私。
 人生初の骨折はあまりにも唐突で。

「肋骨の場合はね、基本は放置してくっつくのを待つしかないんだ。だから体は動かさないようにね。コルセットいる?」
「あ……はい。お願いします」
「じゃあ鎮痛剤と一緒に処方しておくね。もし合わなければ、薬局に他の種類も売ってるから」
「はい……」
「採血もしよっか。いま準備するね」

 トントン拍子に診察が進んでいく。
 下された診断は肋骨の骨折。
 額の傷は浅くて、縫うほどでもなかった。
 消毒後に絆創膏を貼った程度の怪我だった。

 おでこは小さい傷でも血がドバーって出るからね~、なんて爽やかな笑顔で言い放つ先生に戦慄が走った。そういうものなのか。



 ……まるで実感が湧かなかった。
 自らの身に起きたこと。
 なんだか悪い夢を見ているかのようで。
 気持ちが追いつかない。

 ――けれど。

 体中に残された痣の数々。
 肋骨に響く鈍痛が。
 まぎれもなく、数時間前に起こった現実を私に突き付けてくる。
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