募る想いは果てしなく
 早坂の言葉に頷きながら、体を背もたれに預ける。
 瞳を閉じれば、心地良い沈黙に包まれた。 

 じんわりと押し寄せる背中への倦怠感。
 ストレスによる筋肉疲労かもしれない。
 今日は本当に疲れたな……。

「……七瀬」
「なに?」
「あのさ」
「――七瀬さん、診察室にどうぞ」
「あ、はい」

 名前を呼ばれ、慌てて立ち上がる。
 瞬間、あばらに鋭い痛みが走った。
 つい顔をしかめてしまう。
 本当に骨折してるんだ、と今更実感する。

「ごめん早坂。ちょっと行ってくる」
「……ああ」
「……?」

 はたり、と瞬きを落とす。
 糸のような細い声音。
 その弱々しさに引っ掛かりを覚えて動きを止める。

「……どうしたの?」
「……後で話あるんだけど」
「話?」
 
 早坂は俯きながら言葉を紡ぐ。
 その横顔は曇りがち。
 固い面持ちは何かを耐えているように見えて。

 ……私のせいかな。
 私が彼に、こんな表情をさせてるのかな。

「えっと、説教系?」
「いや、そういうんじゃない」
「……わかった。あとで話聞くね」

 らしくない態度に後ろ髪を引かれつつも、私は診察室に足を向けた。
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