募る想いは果てしなく
 早坂は真面目で誠実を絵に描いたような人だ。
 頼り甲斐のある彼を慕う人間も多い。
 もちろん男性としても魅力的。
 彼に好意を抱いているお客さんもいるくらい。

 そんな早坂だから。
 宅飲みを拒否する理由も、やっぱり彼らしい、誠実な理由だったことに納得する。
 ただ少々、誤解が生じている。

「彼氏なんていませんが」
「青木って男と付き合ってるだろ」
「……早坂の口からその名前は聞きたくなかった」
「は?」
「もう別れてる。私の中では」

 そう。
 あくまでも『私の中では』だ。
 つまり相手にとってはそうじゃないわけで。
 それが最近の頭痛の種になっている。

「……訳ありか?」

 曖昧な物言いに何かを察したのか。
 訝しむように早坂は私を見つめてきた。

「うん、まあ」
「今日様子が変だったのも、ソイツのせい?」
「ソイツ」
「……話聞いたら帰るからな」

 ほらね、こうなっちゃう。
 本当に、どこまでも優しい奴なんだから。
 そんな彼に私は今日も甘えてしまう。
 早坂の隣は本当に居心地がいい。

 いずれ彼と付き合うであろう、未来の彼女に思いを馳せる。
 正直、羨ましいと思った。
 だって早坂なら絶対に、彼女一筋で誠実な付き合い方をしてくれそうだから。
 そういう普通の恋愛がしたい。したかった。

 ……なんせ、私の彼氏はとんでもなく酷い人だったから。
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