募る想いは果てしなく
「……うん、戻るよ。あそこしか帰る場所ないしね。心配してくれてありがと!」

 気まずさを誤魔化すように笑う。
 意識的に口角を上げて、ぎこちない笑顔を取り繕った。

 こんな事態になったのは自業自得。
 早坂の忠告を聞かなかった私が悪い。
 だから、もう迷惑をかけられない。
 これ以上は心配かけちゃいけない。
 私なら大丈夫だと告げて、この話を終わらせるつもりだった。

 でも早坂の表情は険しいまま。
 眉根を寄せて、真剣な眼差しで私を射抜く。

「……アイツ、待ち伏せしてたらどうすんだよ」
「え……」

 その一言に肝が冷える。
 全身の血が冷え渡って、急に動悸が高まった。



 青木さんが待ち伏せしてる可能性。
 一切考えていなかったと言えば嘘になる。
 でも、あんな事があったばかりなのに。
 彼がまた部屋で待ってるなんてありえない、普通であればそう考える。
 絶対に大丈夫だと断言できる確証はないのに、あの人は逃げて家に帰ったんだって信じたかった。虫のいい話だ。

 彼がこのまま引き下がるとは思えない。
 また私に接触してこようとする。
 もしこのまま部屋に帰って、あの人が待ち受けていたら――

 そう思った瞬間、悪寒が背筋を駆け巡った。
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