募る想いは果てしなく
「部屋の前で待ってたんじゃないのか?」
「違うよ。部屋の中」
「合鍵か?」
「うち、複製禁止だもん。合鍵なんて作ってないよ」
「……じゃあ、どうやって青木は部屋の中に入ったんだよ」
「知らない。ピッキングじゃないの?」
「……ったく」

 呆れ果てたと言わんばかりにため息を漏らす。
 早坂の言葉を受けて、ちゃんと青木さんに問い詰めておくべきだった、と後悔した。
 ピッキングなんて荒業が素人にできるのかは謎だけど、もしそうなら気持ちの悪い話だ。

「うちのマンション、防犯カメラも設置してないから確かめようがないんだよね」
「……七瀬、鍵見せて」
「ん? うん、いいけど」

 部屋に散乱してたバッグは、早坂がスマホと一緒に回収してくれていた。
 その中から目的の物を取り出し、早坂に渡す。

「……ディンプルキーだな」
「何かわかった?」
「……いや、何も」

 曖昧な返事を残して鍵を返された。
 なんの変哲もない鍵だ、特に調べる箇所も無かったのだろう。

「……話は戻るけど。警察がどこまで動いてくれるかはわからないけど、青木への抑止力にはなるかもしれないだろ。二次被害も防げるかもしれない」
「……」
「向こうの家族には悪いけど、それだけのことを青木はやったんだ。ちゃんとわからせた方が、」
「早坂」
「……なに」
「青木さんのお子さん、8歳なんだって」
「……は?」

 突然の情報開示に早坂の眉が寄る。
 だから何だ、とでも言いたげなその瞳を、私は真っ直ぐに見据えた。
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