募る想いは果てしなく
「ねえ、わたし絶対迷惑かける」
「迷惑なら、酔った時に散々かけられてるけど」
「今は酔ってないでしょ! とにかく、泊まるのは今日だけね。明日からは自分でどうにかするから。なんなら店泊するから」
「……」
「そこで黙んないで」
「……とりあえず中に入れ」
「はい……」

 渋々頷くしかない。
 今日の寝る場所は一応確保できた。
 一方的に話を進められてしまった感が否めないけど、結局私の方が折れた。

 中に入れば、フローラルな香りが出迎える。
 センスよく整頓された空間が、視界いっぱいに広がっていた。
 洗練された雰囲気に圧倒される。
 初めて訪れる早坂の部屋に心が躍ってしまう。

「わあ、なんか早坂らしい部屋だね」
「そうか? 普通だろ」

 座ってろ、とリビングのソファーを指しながら、早坂は奥へ行ってしまった。

 素直に腰をかける。
 なんだか落ち着かない気分。
 借りたブランケットを羽織りながら、改めて部屋を見渡した。

 無駄な装飾品を省き、家具はモノトーン調で揃えている。ぽつぽつと置かれた観葉植物が、クールな内装に温かさをプラスしている。
 一言でいえばクールモダンな印象。
 生活感はあまり感じられない。
 清潔感のある空間作りは、さすがはインテリアショップの店員ならではって感じ。

 ローテーブルは艶のあるブラックガラス。
 映し出すものを綺麗に反射させ、重厚感と高級感を作り出している。
 壁絵画時計がお洒落な空間を生み出して、彼のセンスを感じさせた。

「先に入れよ」

 ひとり鑑賞会に浸っていた私に、早坂は上着をハンガーに掛けながらそう告げた。
 顎をしゃくる先は浴室だ。
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