募る想いは果てしなく
 2人で盛り上がりながら車にたどり着く。
 運転席にいた当の本人は、栄養ドリンクを飲んで一息ついていた。お疲れ様です。

「早坂、疲れてる? 大丈夫?」
「それこっちの台詞。検査どうだった?」
「骨折以外は全く問題なかったよ」

 ひらひらと手を振って応えれば、かなえちゃんが早坂の手元を覗き込んだ。

「早坂さんに栄養ドリンクって似合わないですね。そんなに疲れてるんですか?」
「もう若くないからな。あんまり眠れなかったし」

 何気なく発した早坂の一言に動きを止める。
 つい声を上げてしまいそうになって、かなえちゃんの存在を思い出して口を噤んだ。

 やっぱり寝苦しかったのかな。
 ベッド狭かったもんね。
 昨晩ベッドを共にした身としては、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「七瀬、この後どうする?」
「一度マンションに戻るよ。しばらく戻る予定もないから、必要なもの取りに行ってくる。大家さんにも会っておかなきゃ」

 いつ帰ることが出来るのか。それがわからない以上、長期不在の旨を大家さんに報告しなきゃ。
 不測の事態が起きた場合の為に、私の連絡先を伝えておいた方がいいだろうから。

「そういえば七瀬さん、昨日はどこに泊まったんですか?」

 不意に核心をついてきたかなえちゃん。
 早坂が栄養ドリンクを噴き出した。
 盛大に咳き込んで、誰が見ても不審な反応。
 現にかなえちゃんも、眉をひそめながら早坂を見返している。不審者を見るような鋭い目付きだ。

 それはそうだろう。
 かなえちゃんは私に訊いてきたのに、直後に早坂が大袈裟な反応をしたら怪しまれるのは当然だ。
 ……仕方ないなあ、もう。
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