募る想いは果てしなく
「作るよ。作る作る。彼氏欲しいもん」
「今度はどんな人と付き合いたいですか?」
「浮気しない人かな」
「それは大前提ですけど」
「うん、とりあえず年も年だから。高望みはしないかな。一緒にいて落ち着ける人がいいね」

 私も今年で26歳。
 決して若いとは言えない年齢。
 四捨五入すればもう30代だ。

 もちろん普通に恋愛したいし、今度こそ結婚を視野に入れた交際を望んでる。
 ここで消極的になったら、あっという間にアラサーだ。本当に後がなくなってしまう。

「あーあ、結婚したいなー」

 情けない嘆ぎを口にする私の隣で、かなえちゃんはポケットからスマホを取り出して弄り始めた。
 そして私に目を向ける。

「あの、七瀬さん」
「ん?」
「七瀬さんに聴いてもらいたいものがあって」
「私に?」

 彼女の指が画面の上を滑る。
 そして目的のアプリをタップした。
 それが何のアプリなのかはわからない。

 SNSの影響をモロに受けたかなえちゃんは、様々なアプリやツールに手を出している。タイムラインに流れてくる面白動画をスタッフに見せて、和気あいあいと盛り上がっている光景を何度も見た。

 けれど彼女は今、聴いてもらいたいものと言った。
 面白動画を見せたいわけではなさそうだけど。

「何を聴いてほしいの?」
「えっと、盗聴内容です」
「……え?」

 物騒な言葉に一瞬固まる。
 犯罪的な言葉が出てくるとは思わなかった。

 思わず身構えてしまう。
 対してかなえちゃんの表情は変わらない。
 スマホに視線を落としたまま、囁くような細い声で尋ねてきた。
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