離婚した元旦那様、恥ずかしいので心の中でだけ私を溺愛するのはやめてください、全て聞こえています。
「わかる?
 今の湊斗さんの妻は私なのよ。
 これ以上、私と湊斗さんの邪魔はしないでちょうだい、迷惑だわ。
 すぐにここから出て行くことね。
 従わないというのなら、力づくであなたを排除する必要があるけれど、どうする?」

 妙に圧力を感じさせる小花の口調に、たじろぎながらも朧は何とか言葉を返す。

「確かに、わたしはもう湊斗さんの妻ではありません。
 けれど……わたしは湊斗さんのことが好きです。
 湊斗さんもきっと……。
 だから、ここを出て行くことはできません」

 決然と告げた朧を、あざ笑うように見下ろして、小花は「……そう、わかったわ」とだけ呟いて、残虐な笑みを浮かべる。

 一歩、また一歩と近づいてくる小花に圧され、朧は後ずさる。

 小花の手には、湊斗の腹部を貫いた短刀と、同じものが握られていた。

「あなたが……湊斗さんを刺したの?」

「いいえ、私じゃない」

《直接手を下すなんて浅はかなことはしないわ》

 小花の心の声が、彼女が何らかの形で湊斗襲撃に関与したことを裏付けている。

 直接的にではないにしろ、小花が湊斗に危害を加えたのは間違いない。

 朧の中に、経験したことのない怒りの感情が生まれる。

 許せない。

 何の罪もない湊斗を刺し、傷つけるなんて。

 きっと朧が睨みつけると、小花は勝ち誇ったように不敵な笑みを見せた。

 短刀が、きらりと妖しく光る。

 対する朧には、武器といえるものがない。


 形勢は不利だった。

 朧の背中を、冷たいものが流れ落ちる。


 どうする?

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