キミのために一生分の恋を歌う -first stage-
車から見える景色からはどんどん建物が減っていった。
予想通り、という言葉をこういう時に使いたくはなかったけれど。
到着したのはお墓だった。
周りには何も無くて、ひまわりだけが沢山咲いていた。綺麗な場所だ。
駐車場に車を停めたあと、管理事務所のような所があったので、そこで晴さんは挨拶を済ませたあと花束を買った。

「じゃあ、行こうか」
「うん」
「小夏、しんどくない?」
「うん、大丈夫」
「身体のことだけじゃない、気持ちのことも言ってる」
「うん、本当に大丈夫だよ」

私は少し無理して笑った。
そのお墓にはまだ”諏訪野 陽菜”の名前しか刻まれていなかった。亡くなったのは一昨年の春になっていた。享年は17。晴さんとは少し歳が離れている。私に分かったのはこのくらい。

「先にご挨拶、させてもらうね」

そう言って私はお墓の前に膝をついて座り、丁寧に手を合わせる。
晴さんは花束を飾ったり、お水で丁寧に掃除したあと、隣に座って手を合わせた。

「妹は……陽菜は小夏と同じ気管支喘息だった。小さい頃から歳も離れてたしずっと病気がちで、僕はいつも陽菜の心配ばかりしていた。だから陽菜のために医者になろうと決めて、たくさん勉強して、研修医になって、専門医になる。そしていつかは地元に帰って陽菜のそばで力を尽くせる。そう思っていた」
「晴さんらしい、目に浮かぶようだよ」
「そう? まぁ、真面目だけが取り柄だからな」
「そうだね」

晴さんはそこで手を合わせるのをやめて、立ち上がった。
お墓から背を向けるようにして、少しだけ歩き出したので、後ろを着いていく。

「ある日、実家から電話がきた。陽菜が流行していた感染性のウィルスによって重度の肺炎にかかったと」
「それって……」

数年前、流行していたそのウィルスは最近では死まで至ることは少ないものの、ちょっと前までは死に至る病として恐れられ何人もの人が亡くなった。

「僕が陽菜のいる病院に駆けつけた時には、ほとんどもう手の付けようがなかった。本当にあっという間だったよ」

晴さんが駆け付けた数日後に陽菜さんは亡くなったと言った。
そして、あっという間に彼女は骨だけになって帰ってきたと。
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