キミのために一生分の恋を歌う －first stage－

それから、私は晴の方を向いて言った。

「そして今、私の隣にいて、バイオリンを披露してくれた彼に出会って、私の世界は変わりました。彼は臆病だった私の背中をいつも優しく、時に厳しく押してくれました。今の私の生きる意味そのものです」

晴は何も言わずに丁寧に頭を下げる。
そして差し出した私の手を取り、客席に向けて笑った。

「皆さんにも、大切な人はいますか？ その人が今日も笑ってくれていますように。例え、遠く離れていてもいつまでも心は繋がっています」

そして、私は胸の前で手を組んで、祈った。
遥か彼方の空にいる、貴方へ。
これからも、願い続ける。
この歌がこの声が、この命があの人にも届くようにと。

「私はこれからも歌い続けます。だから皆さんもどうか元気でいて、私の歌を聴いてください。そこにはきっと、想像を超えちゃうくらい楽しい世界が広がっています。今日は本当にありがとうございました。必ずまた会いましょう！！」


拍手が鳴り止んだあと、私はまた頭を下げて、それから人差し指を前に出して、静寂を作った。



これは私が命をかけて、やり遂げたいこと。
私の一生分の恋を、この願いを、全てを込めていま歌うから。
どうかあなたに届きますようにーー



最後に、私はゆっくりと深呼吸し、さよならのかわりにアカペラで歌を歌った。
それはedge of……のアレンジだった。



ーー手を握って それから指切りをしよう
未来のために
だからお願い 1ミリだけでいいから 消えないで
今日も世界の果てで、キミのことを想うから

春が来て夏は過ぎ秋が来て冬がはじまる
そして季節は巡り 桜の舞う中 キミと出会えるハルがやってくるーーー





『キミのために一生分の恋を歌う －first stage －』【完】