繰り返し何度も私を殺すその人が何度死に戻っても好きな件
 訓練で剣はまだ握っているのだろうが、騎士だった時よりも固くはない。
 その代わり、執事だった時のようにペンだこで中指の第一間接が固くなっている、そんな手だった。

(テオドルの手をこんなに堂々と握れる日が来るなんて)

 トクントクンと鼓動が速くなる。
 ただ手を握っただけなのに、胸の奥が温かくて凄く嬉しい。
 自然と頬が緩みそうになるのを必死で堪える。

 ――あぁ、私ってば本当に愚か。
 私を何度も殺してやり直している彼のことが、私のことを生贄にしている彼のことが、今回もどうしたって、好きらしかった。

 自分でもそんな自分のことが信じられず、どうしてなのかわからない。
 まさかいつも最後は泣いている彼を見て絆されているのかとも思ったが、その答えも結局はわからなかった。

 だが、心配そうに私の手を握るテオドルを見て、もう彼に私を“殺させたくはない”と、そう思った。

 ◇◇◇

「つまり、親しくなればいいんじゃないかしら」

 決してテオドルと仲が悪かったわけではないが、それでも使用人の彼とはずっと一緒に居られなかった。
 だが今回は義理とはいえ兄妹なのだ。
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