黒眼帯の氷結辺境伯は冷遇された令嬢を一生涯かけて愛したい



 ソフィアの部屋の本棚に、一冊の古びた本がある。それはありとあらゆる古代の魔法が記された古文書でソフィアの実家に代々受け継がれてきたものだ。
 そこには、古から伝わる紋様とその能力について詳しく書かれており、その紋様がどうしたら消えるのかもかかれていた。だが、ソフィアは義父の家にいる間外に出るのを禁止されるのと同時に本を読むことも禁止され、その本は開かれることもなく荷物のずっと奥底に眠っていた。

 ルードの家に来てからも毎日が忙しく充実した日々で、本のことはすっかり忘れて本棚に放置したままになっていた。

 ルードとソフィアが結婚して数年後、二人の間には玉のように可愛らしく好奇心旺盛な子供が誕生する。その子供はすくすくと成長し、ソフィアの部屋の本棚でその古文書を見つけるのだった。

「なになに?紋様の種類とその能力について――これって、お父さまがお母さまに出会う前に手首にあったという紋様のことかな。その紋様を持つものは、氷、石、炎、風といずれかの能力一つを発揮して、体に紋様が現れた側の瞳で見た命あるものを氷もしくは石に変え・炎で焼き尽くし・風で切り刻む、か。聞いていた通り、すごい物騒な能力……この能力は使い方によってはギフトでもあり、また呪いでもある。この能力が唯一効かない血筋があり、その血筋の家はその能力を消すことができる。その方法は……」

 その一文を読みながら、子供の顔に笑みがこぼれる。そして、読み追わって本を静かに閉じると、子供は満足そうに息を吐いた。

「そっか、やっぱり、お父さまとお母さまは心から愛し合っていたんだ。相手を思いやり、大切に思う純粋な心、つまり愛こそ、その能力を打ち消す方法、か。すごくロマンチック」

 本を本棚にしまうと、窓の外を眺める。自分も、いつか両親のようにお互いを思い合い、愛し合うことのできる相手に出会えるのだろうか。

「いつか出会えるといいな」

 ぽつりと呟いた言葉は、部屋に鳴り響いた。ふと、廊下から自分を呼ぶ声がする。

「はーい!今行きまーす!」

 ソフィアとルードの子供は、大きな声で返事をして、慌てて部屋を出て行った。部屋が静かになると、本棚で一冊の古文書が一瞬だけ光り輝いた。
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