傷心女子は極上ライフセーバーの蜜愛で甘くとろける
 凪が助けようとした男の子はすでに救護室に運び込まれていたらしく、中は騒然としていた。
 ベッドはパーテーションで仕切られていて、男の子の詳しい様子は窺えない。だが漏れ聞こえた会話から察するに、男の子の意識は幸いにもあるらしい。凪はホッと胸を撫で下ろした。

 救護室の簡易ベッドは二台あるようで、凪は空いていたもう一方のベッドの上に下ろされた。

「起き上がらなくていいから、タオルでしっかり体を温めて」

 厚手のバスタオルを手渡され、凪はベッドに寝転びながらそれにくるまる。

「あの、すみませんでした……ご迷惑をおかけして……」
「ん?なんで謝るんだ?」
「だって、あの、余計なことをしてしまったじゃないですか。あの子を助けられないばかりか、私まで助けてもらう羽目になって……」

 男の子が溺れているのを見つけた時は、一刻も助けなければと体が勝手に動いていた。威勢よく飛び出したはいいものの、結局一緒に溺れかけてしまうなんて、迷惑もいいところだろう。
 凪が頭を下げる動作をすると、彼は床に膝をついて凪に目線を合わせた。
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