傷心女子は極上ライフセーバーの蜜愛で甘くとろける
「な、なんですか……?」
「凪は可愛いな」
「か、かわっ?!」

 思わず変な声が出た。
 いや、だって、いまの今まで自分に可愛い要素なんて微塵もなかったはず。
 動揺から瞼が何度も瞬きを繰り返す。凪は気を取り直すようにコホンと一つ咳払いをした。

「あの、無駄に褒めても何も出ないです」
「無駄って。俺は本心からそう言ってる。それに凪に何か出させるつもりもない。俺が誘ったんだから当たり前だろ?」
「そもそも、どうして私を誘ったんですか?」
「昼間会ったときからずっと、凪のことが気になってたから」
「え、えっ?」

 途端に凪の心臓がときめくのと同時に早鐘を打ち始める。

(この人、遊び慣れてる……!)

 いきなり名前呼びをしたり、さりげなく褒めたり、殺し文句みたいなことを言ったり。
 きっと何人もの女性に同じようなことを言っているに違いない。そうやって甘い言葉を囁いて、女性を食い物にしているんだろう。

(私は、そんなつもりないんだから)
 
 いくらとんでもなくイケメンとはいえ、一晩遊ばれてポイっと捨てられるのはゴメンだ。二度も惨めな女に成り下がりたくない。

 そう心に決めて凪は身構えるように肩をいからせた。
 
 ウェイターが運んできたシャンパンを手に取り、乾杯の時に漣が「運命の出会いに乾杯」なんてキザすぎる台詞を口にしても、凪は唇を真一文字に結んでいた。密かに心臓が暴れ狂っていてもバレてはいないはず。
 
 照れ隠しにグラスのシャンパンを一気に飲み干した。こんな状況、酔わなきゃやってられない。

「あんまり飲みすぎるなよ」

(誰の!せいで!)

 凪の調子を狂わす元凶が他人事のように余裕の笑みを浮かべていて、凪は地団駄を踏みたくなった。……踏まないけれど。
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