傷心女子は極上ライフセーバーの蜜愛で甘くとろける
 眼下の黒い海は穏やかに、波を寄せて返している。プールの縁に手を添えながらふと夜空を見上げると、クリーム色の満月が夜空を淡く彩っていた。

「……ッ」

 刹那、凪は息を呑んだ。
 火傷しそうなほどの熱が背中に触れたのだ。逞しい腕が伸びてきて、凪を囲うように漣がプールの縁に手をついた。
 
 まるで堅牢な檻に閉じ込められてしまったよう。
 水が急に冷たくなったような気がした。

「凪、好きだ」

 不意に囁かれた愛の言葉に、凪の閉じた口内では悲鳴が行き交った。
 だって漣は本気じゃない。ただベッドへ誘い込むための甘言を紡いでいるだけ。わかっていても、胸の高鳴りが止められない。

(嘘、嘘なんだから……)

 そう言い聞かせていないと、勘違いをしてしまいそうで怖かった。
 なのに――拒絶するように体を強張らせる凪の体を、漣は優しく抱き寄せてくる。
 
「会ったばかりだけど、自分でも信じられないくらい凪に惹かれてる。今日が終わっても、俺と一緒にいてほしい」
「…………そういうの、誰にでも言ってるんでしょ」
「そんなわけないだろ。凪だけにしか言ってない」
「嘘だよ!」

 漣の腕を振り払い、凪は振り返って彼を睨め上げる。
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