傷心女子は極上ライフセーバーの蜜愛で甘くとろける
「そんなわかりきった嘘はやめて。漣なら相手なんていくらでもいるでしょ。私で遊ばないで」
「俺は本気だ、凪。本気でおまえが好きだ。遊びなんかにするつもりはない」

 思わず言葉に詰まった。
 凪を見下ろす双眸があまりにも真剣味を帯びていて、嘘を言っているとは思えなかったから。
 でも、漣を信じ切れるほど、凪は彼を知らない。

「なんで……だって、私のこと、なんにも知らないのに……どうして好きって……」
「なんにも?そんなはずない。凪は色んな顔を俺に見せてくれただろ?見ず知らずの子供を咄嗟に助けに行くくらい、思い切りがあるところ。すぐ赤くなって照れる可愛いところ。それに優しいところ」
「……違う、私、可愛くなんてない。優しくもない……全然、ぜんぜん違う……」

 凪は何度も首を横に振った。
 なぜか視界が歪んでくる。喉が熱い。呼吸も上手くできない。
 楽しくなんてないのに無性に笑いが込み上げてきて、凪はどこか遠くを見て力なく笑った。

「私、フラれたの。三日前に。彼、私のこと顔しか好きじゃなかったんだって。私の、可愛げないとことか、女らしくないとことか、ずっと嫌だったんだって。四年も付き合った彼氏に、そう言われたんだよ?だから……私は、漣が思ってるような人間じゃないの……漣は、私のことなんてなにも……ッ」
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