傷心女子は極上ライフセーバーの蜜愛で甘くとろける
(なんで、言ってくれなかったの……)
 
 一緒にいた二日間で、仕事の話になったりもした。漣はサービス業界に勤めているとだけ言って、あまり詳しい話はしたがらなかった。
 
 SKリゾートは、凪が漣と出会ったプルメリアリゾートの親会社だ。御曹司云々は抜きにしても、親会社に勤めているのだと話してくれる方が自然じゃないだろうか。
 意図的に隠していたとしか思えない。

(もしかして、知られたくなかった……?)

 遊びだから――いずれ捨てる女に御曹司だなんて知られたら面倒だろう。タカられるかもと警戒したのかもしれない。

 漣が自分を信用してくれていなかったことが、ショックだった。
 凪の心に黒い影が落ちる。急に肌寒く感じてブルリと体が震えた。
 肺を両手で押し潰されたように、胸に痛みを伴いながら長いため息が凪の口からこぼれ出る。

 そんな凪を見て、真奈美が不思議そうに瞬きをした。

「どうしたの、凪?なんか顔色悪くない?」
「……ううん、なんでもない。会社のこととか教えてもらってなかったから……ちょっとびっくりしちゃって」

 真奈美にスマートフォンを返しながら、凪は取り繕ったような微笑みを浮かべた。
 
「そうなんだ。確かにいきなり御曹司なんて言われたらびっくりだよね。でも実はニートでしたとかより全然よくない?」
「そうだけど……なんか余計に遊ばれてる感が増しちゃって……」

 とんでもなくイケメンな上に、御曹司。女なんてよりどりみどりに違いない。そんな男が、わざわざ凪を本命に選ぶだろうか。……いや、ない。どう考えても。
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