傷心女子は極上ライフセーバーの蜜愛で甘くとろける
「やっぱり、本命がいたんだ」

 凪よりずっと美しい女性が――

 事実を認めると、血が滲んだように口の中に苦味が充満した。部屋の照明が瞼に沁みて、逃れるように枕は顔を埋める。
 
 やっぱり、漣にとって凪はただの遊び相手だったのだ。囁かれた甘い言葉は情熱的な夜を過ごすためのスパイス。別れ際のキスは、最後まで夢を見せてくれただけにすぎない。

 わかっていたはずなのに、ショックで胸が張り裂けてしまいそう。
 いや、わかってなんていなかった。頭に言い聞かせたところで、心が漣に惹かれるのを止められなかった。

 もしかしたら、この記事はデマかもしれない……そんな希望的観測が不意に頭をよぎる。
 でも、そんな期待はすぐさま打ち捨てた。
 
 デマかどうかなんて確かめようがない。漣本人が否定してくれても、心の中でずっと疑い続けてしまう。

「バカ……私って、ほんっとバカ……」

 安易に流されて、そうしてまた裏切られて。割り切ることも、かといって信じ抜くこともできなくて。
 何もない。結局残ったのは生々しい傷跡だけ。本当に、バカとしか言いようがない。

 顔を埋めた枕が湿っていくのを頬で感じながら、凪はシーツをギュッと握りしめた。
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