傷心女子は極上ライフセーバーの蜜愛で甘くとろける
 漣の連絡先も、メッセージの履歴も、写真も、彼の痕跡は全て消去した。最初から出会わなかったかのようにすればいいと、そう思って。

 凪が選んだのは、漣を忘れることだった。
 漣には恋人がいる。二度も浮気相手にはなりたくない。
 
 たとえ恋人の存在が週刊誌のガセだったとしても、凪は漣を信じることができなかった。疑心暗鬼に駆られたまま、漣と一緒にいることなんてできない。今目を瞑ったところで、いずれ心が擦り切れて耐えきれなくなるのが分かりきっているから。

 それに漣もまた、凪を信用せず正体を隠していた。
 お互いの信用がない関係なんて、いずれ破綻してしまう。遅かれ早かれ、こうなる運命だったに違いない。

 心に暗幕を下ろして、凪はまたいつも通りの日常に戻った。
 朝起きて会社に行って、あちこち営業先へ飛んで行って、オフィスに戻ったらパソコンにかじりついて、そうして働き尽くしたら自宅に帰って、テレビで大して興味のないドラマを見ながらあり合わせの夜ご飯を食べて、ベッドに倒れ込む――そんな何の面白みもない、灰色の日常に。

 何をしていても、心がぽっかり空いていた。
 理由はわかっている。でも、気づかないふりをした。
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