傷心女子は極上ライフセーバーの蜜愛で甘くとろける
 はあ、とまたため息を吐いて顔を上げた。
 目の前の海は綺麗な青に染まっていて、太陽の光を受けてきらきらと輝いている。
 ドス黒い底なし沼のような色をした凪の心とは正反対。とても羨ましく思えた。

「とりあえず、泳ご……」

 泳いで、泳いで――そうしたら自分の心もあの綺麗な青と同じ色に染まれるだろうか。

 引き寄せられるように、凪はおもむろに立ち上がった。
 浮き輪を手に、押し寄せてくる波に足を浸けた。ひやりと冷たい水の感触が心地よくて、凪の顔が思わずほころぶ。
 もう一歩、と足を踏み出そうとしたその時だった。
 
「あっれ〜?お姉さん一人〜?めっずらし〜」

 神経を逆撫でするチャラついた声が耳に飛び込んできて、凪はつい振り向いてしまった。
 三人の男がニヤつきながらすぐ後ろに立っていて、凪は即座に振り返ったことを後悔した。
 色が抜けて根元が黒くなった金髪に、明らかに日焼けサロンで焼きました的なこんがり肌。かろうじてタトゥーは入っていないものの、体に絵が描いてあっても驚かない。典型的なチャラ男である。
 そんな輩が凪に声をかけてくる理由は一つ。
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